日韓夫婦の二重国籍の子供はいずれ国籍を選択する必要が出てきますが、いつでもどこでも自由に選択できるというものではありません。
日韓夫婦から生まれた子供は、自動的に二重国籍になります。韓国では2011年の法改正により、出生による複数国籍者の場合は国籍選択の代わりに外国国籍を韓国国内で行使しないという誓約を行うことで、外国籍を維持したまま韓国国籍の選択が可能になりました。しかし、日本側は依然として複数国籍を認めていないため、満22歳までに国籍を選択する必要があることに変わりありません。

さて、韓国では複数国籍を容認することになったということ、また日本では国籍選択の義務はあるものの、日本国籍選択後の外国籍の離脱は努力義務(罰則なし)であるということで、何かしら日韓の二重国籍を維持する方法もあるのではないか、という内容の記事を見かけます。
結論から言うと無理です。
국적법 제13조(대한민국국적의선택절차) ① 복수국적자로서 제12조제1항 본문에 규정된 기간 내에 대한민국 국적을 선택하려는 자는 외국 국적을 포기하거나 법무부장관이 정하는 바에 따라 대한민국에서 외국 국적을 행사하지 아니하겠다는 뜻을 서약하고 법무부장관에게 대한민국 국적을 선택한다는 뜻을 신고할 수 있다. 【翻訳】国籍法第13条(大韓民国国籍の選択手順) 複数国籍者として第12条第1項本文で規定された期間内に大韓民国国籍を選択しようとする者は外国国籍を放棄するか法務部長官が定めたところにより大韓民国で外国国籍を行使しないと言う意思を誓約し法務部長官へ大韓民国国籍を選択するという意思を申告することができる。
国籍法第十一条 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。
韓国の外国籍不行使誓約はあくまでも韓国国籍の「選択」とセットです。外国国籍の放棄を強制しなくなっただけであり、国籍の「選択」の義務自体がなくなったわけではないのです。そして日本の国籍法では外国国籍を「選択」した場合には日本の国籍を失うということになっています。ですので日本国籍の不行使の誓約を行ったところで、韓国国籍を選択した瞬間に日本国籍は喪失し、二重国籍ではなくなるのです。
そもそも二重国籍を維持したいという動機は何なのでしょうか。せっかく二つ持っているのに手放すのは何となく勿体ない?将来どちらの国でも住めるようにしてあげたい?
外国で暮らそうという人にとって、最も大きな問題は在留資格(ビザ)だと思います。たしかに、在留資格が延長できずにやむなく帰国した人、就労が可能な在留資格を持っていないために仕事を得られないという人は、僕の周りにもいます。ただ、その在留資格の問題さえ解決してしまえば、その後の外国での生活において国籍はそれほど重要ではないと思うのです。僕は日本人なので韓国では外国人として暮らしていますが、日本国内で暮らしていたときと比べても、外国人だからといって生活に不自由さを感じることはほとんどありません。もちろん言葉の面で苦労することはありますが、それは言語能力の問題で、国籍の問題ではないのです。
では、日韓二重国籍の子供がどちらかの国籍を選択した後、国籍を放棄した方の国で住みたいという場合、在留資格はどうなるでしょうか。
韓国国籍を選択した場合
日本国籍を放棄して韓国国籍を選択した場合、その後にもし日本に住みたいという場合には「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することができます。これは日本人が国際結婚した場合に外国人配偶者が取得するものとして知られていますが、「等」とついているのは日本人の実子や養子にも申請資格があるためです。この在留資格には就労制限もなく、日本人と同じように働くことができます。「日本人の配偶者等」の在留資格を申請するためには日本人の身元保証人が必要です。日本人の親が日本に居住している場合は問題無いですが、もし親が外国に居住していて子供が単独で日本で生活しようという場合には他の親戚などに身元保証人になってもらう必要があります。また、もし子供が経済的に自立できていない場合には、扶養者の選定および扶養能力の証明も必要になります。もし子供がこの「日本人の配偶者等」の在留資格を取得した場合、その後1年間日本に在留することで永住資格の申請も可能です。
日本国籍を選択した場合
韓国国籍を放棄して日本国籍を選択した場合、その後もし韓国に住みたいという場合には「在外同胞(F-4)」の在留資格を取得することができます。この在留資格の申請資格のうち過去大韓民国籍を有したもので外国国籍を取得した者に該当します。この在留資格は就労にほぼ制限はありませんが、単純労務(配達・警備・掃除等)に従事することは禁じられています。また、二重国籍の男性が兵役を終えることなく韓国国籍を離脱した場合には、「在外同胞」の在留資格は付与されないということにも注意する必要があります。「在外同胞」在留資格所持者は、国籍取得要件を満たすことで永住資格の申請が可能になりますが、過去に韓国国籍を持っていて離脱した人は「国籍回復対象者」に該当するため、国籍取得要件を自動的に満たします。ただし実際に永住資格の許可を受けるためには生計維持能力の証明も必要ですので、ある程度の所得が必要になります。

以上より、日本の国籍を選択しても、韓国の国籍を選択しても、後にもう一方の国で暮らしたくなった場合には容易に在留資格を得ることができ、条件を満たせば永住資格まで取得することが可能だということが分かりました。ですから、わざわざ二重国籍に固執する必要はないと思うのです。ただし、男性が韓国で兵役を終えずに日本国籍を取得した場合はそのような好待遇は無くなり、一般の日本人と全く同じ扱いになります(韓国で住むためには就労ビザなどが別途必要)。このことを踏まえると、二重国籍の男の子がもし日本国籍を選択しようという場合には、将来的に韓国で生活することになる可能性があるのかを考え、場合によっては韓国で兵役を終えた後に日本国籍を選択するという方法も検討してみる価値はありそうです。
国籍の選択は子供の人生を左右するとても重要な選択です。後に後悔するようなことがないよう、親がしっかりサポートしてあげることが大切だと思います。
とてもためにな情報ありがとうございました。